Published: 2025-07-18 19:45

「GQ JAPAN クリエイティブ・ウィークエンド」── Ginza Sony Parkで開催された展示イベントをレポート！

「GQ クリエイティビティ・アワード」は、アートや建築、工芸などさまざまな分野で時代を切り拓く先駆者たちを讃えるプロジェクトとして2023年にスタートしたプロジェクトだ。今年『GQ JAPAN』ではアーティスト・ミュージシャンの大森元貴（Mrs. GREEN APPLE）、陶芸家の安永正臣、建築コレクティブのGROUP、アーティストの藤倉麻子、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE (ギロチンドックス・ギロチンディ、以下GCD☆GCD)の5組を選出した。

【写真を見る】「GQ クリエイティビティ・アワード 2025」の受賞者たちの作品を展示するイベント「GQ JAPAN クリエイティブ・ウィークエンド」。展示作品からトークショーなど、全貌と盛り上がりの様子をレポートする。

今年で2回目となる展示イベント「GQ JAPAN クリエイティブ・ウィークエンド」は、東京・銀座のGinza Sony Park 3階と4階のスペースで開催された。4階は本邦初公開となる大森の写真作品のパネルが展示され、トークショーや記者発表も同フロアで開催。3階には安永、GROUP、藤倉、GCD☆GCDの多彩な作品が並んだ。

三重県伊賀市で作陶する安永正臣は、陶の作品3点を展示した。通常、陶芸は土を捏ねて窯の中で焼くものだが、安永の場合は粘度の高い釉薬をベースにして素地を形づくり、その外側も内側も砂や石や土に埋めて焼成するという、極めて珍しい手法をとる。その結果、窯の中で溶けた釉薬に石や砂が付いて形が成立し、表面には独特の表情が生まれる。

「僕がつくったというより、石や砂や、窯の中の火の具合、温度を上げるタイミングなどさまざまな環境や事象によって唯一無二の形が生まれます。さまざまなやり方を試して細かくデータをとり、試行錯誤の末に作品が完成します」と安永。

幅3.6mもの大画面にびっしりと瓦礫の山を描き、スチール角柱や工事現場の足場木材などで縁どったのはGCD☆GCDの作品だ。タイトルに「ギロニカ」とある通り、これはピカソの《ゲルニカ》を下敷きとしている。

「2024年元日の能登大震災の報道を見て取り組んだものです。その他、世界中のさまざまな場所で今現在起きている災害や戦争を、スペイン内戦下のゲルニカの街を描いたピカソの作品に重ね合わせ、瓦礫をコラージュするようにして描きました」（GCD☆GCD）

美術史上の名作が現代アーティストのクリエイティビティを刺激し、また過去と現在が地続きであることを感じさせる。

3DCGアニメーションの手法を用いて制作した都市や郊外の風景、インフラストラクチャーを題材にした作品3点を出展した藤倉麻子。《Never Ending Sunlights》（2024）、《ずばぬけた看板の光》(2018-2022)、《理想の壁》(2022)、それぞれ7～10分ほどの作品がループで映し出された。

「土地の歴史とは関係なく建てられる無機質な物流倉庫や、外食チェーンの看板が並ぶ幹線道路、都市へとエネルギーを運ぶトラックなどのインフラストラクチャーに以前から興味があった」という藤倉。空虚な風景や目には見えない壮大な流れを、鮮やかなパステルカラーやネオンカラーで構築した架空世界はまさに“藤倉ワールド”。コンクリート打ち放しの空間に鮮やかな色の光を放っていた。

昭和55年以降生まれの建築家から「大阪・関西万博」会場内の公衆トイレの設計案を募集したプロジェクトに参加したGROUPは《夢洲の庭》を制作した。トイレの個室の入り口と出口が異なり、トイレを出ると洗面台と一体化した庭のあるスペースに出るというユニークなトイレを提案。庭は、万博会場着工前の夢洲の植生や生態系を再現した。従来の枠組みにとらわれない建築のあり方を模索する姿勢は、まさにクリエイティビティ・アワードの名にふさわしい。

4階のイベントスペースを取り囲むのは、大森元貴が自ら撮影した写真作品のパネル。カラーはフィルムカメラで撮り、モノクロ写真はデジタルで撮影したという。屋外の何気ない風景やレコーディングスタジオでのショット、自宅かと想像させるような写真も。これまで大森はあくまで趣味で撮っており、写真作品を一般に公開するのは初めてのことだという。