Published: 2025-03-10 20:40

生産終了まで残りわずかとなったGRスープラの魅力を、改めて考えた

生産終了が発表された現行のGR「スープラ」の魅力とは？ 小川フミオが乗って考えた！

【写真を見る】GRスープラRZの細部（14枚）

スポーツカーにとって大事な性能は、乗る人の心を躍らせることだ。GRスープラは、だとすると、第一級の性能をもったスポーツカーである。とりわけ直列6気筒エンジンにマニュアル変速機のRZグレードは、“ザ・スポーツカー”と、呼びたい出来映えだ。

トヨタ自動車傘下のGRは、2017年にスタートしたスポーツブランドで、このブランド専用モデルがいくつもある。スープラは2019年に登場した後輪駆動の2座クーペという、スポーツカーの教科書に採り上げられそうな成り立ちが魅力だ。

スープラ、なかでも今回のRZグレードは、しかも、パワフルで官能的なエンジンを堪能できる仕様に仕上がっている。25年2月にひさしぶりにドライブして、見事なスポーティ感覚がまったく古びて感じられないのは、嬉しい驚きだった。

スープラは、全長4380mm、ホイールベース2470mmの車体に、2997cc直列6気筒エンジンを搭載。285kWの最高出力と500Nmの最大トルクをもち、6段マニュアル変速機と後輪駆動の組合せだ。

エンジンのフィールは素晴らしい！ 基本はBMWが手がけているという。私はBMWの鋳型工場で、この6気筒のブロックが製造されている現場を見たことがある。それ自体がオブジェクトのような美しさだった。

エンジンルームを開けても、トヨタのエンブレムが入った合成樹脂製のカバーがかかっているので、昔のクルマのようにエンジンを眺める楽しみはないのが残念。それでも、太いアルミニウム製のストラットタワーバーが、きちんとチューニングされたクルマだということを知らせてくれるのは、良い感じだ。

高いエンジン回転域でのギヤチェンジを前提に、強化型クラッチを使っているのだろう。かなり重めのクラッチペダルが、スポーツカー好きの心を掴む。と、いっても、エンジンは超高回転型ではなく、1800rpmから最大トルクを発生するので、ちょっとシフトをさぼっても、意外に平気。

エンジンのフライホイールは、ただし、軽めなので、アイドリングのままクラッチをつなごうとすると、エンストしそうになる。このあたりは、クルマに慣れれば、なんの問題もなさそう（すぐ慣れると思う）。

シフトでいうと、もうひとつ特筆すべきは、iMT（インテリジェントマニュアルトランスミッション）をそなえている点だ。シフトダウンのとき、クルマがわがエンジン回転を合わせてくれる。なので、自分でアクセルワークをする必要がない。スパンスパンっとダウンシフトできる。小さなコーナーが連続するサーキットでは、大変ありがたい装備だ。

一説によると、近い将来、トヨタ「セリカ」がミッドシップで登場し、それと入れ替わるように、スープラの製造は終了するとか。WRCを狙うミッドシップ・セリカの登場は楽しみだけれど、フロントに大きな6気筒エンジンを載せて後輪を駆動する、マニュアルギヤボックスのスープラは、冒頭で触れたように、今も輝いている。クルマ好きとしては、2車の共存を強く望みたい。

スープラのラインナップでは、今回の2997cc6気筒搭載で285kWのRZには6段マニュアル変速機モデルと8段オートマチック変速機モデル（ともに¥7,313,000）が用意される。その下には、1998cc4気筒で190kWのSZ-R（¥6,013,000）と、同じ排気量のエンジンで145kWのSZ（¥4,995,000）が用意されている。なお、マニュアルで乗れるのはRZしかない。