Published: 2025-06-05 17:23

【Q＆A】激しい痛み引き起こす帯状ほう疹 症状やワクチンは?

赤い水ぶくれができて、激しい痛みを引き起こす帯状ほう疹になる人が増えています。皮膚の症状が治っても、痛みが数年続く人も。

その予防のためのワクチンがことし4月、接種費用を公費で補助する「定期接種」になりました。

帯状ほう疹の症状やワクチンなどについて、報道局の籔内潤也デスクがお伝えします。

※みなさんから新たにお寄せいただいた質問へのお答えを追加しました。

【動画解説】“帯状ほう疹”が増加 症状は？ワクチン補助は？ Q．帯状ほう疹ってどんな病気？ 痛みを伴う赤い水ぶくれが帯状に現れる皮膚の病気です。

日本皮膚科学会がまとめた「帯状疱疹診療ガイドライン」などによりますと、皮膚の症状が出る数日前から「ヒリヒリ」する痛みが出ます。

そして、皮膚の症状が出ると、焼けるようなとも、刺すようなとも言われるような痛みが出るとされています。

こうした痛みは1か月ほど続きます。

数か月から数年にわたって「針で刺されるよう」と言われる痛みが続くこともあります。

50歳以上で帯状ほう疹を発症した人の2割ほどの人は、こうした症状が続くとされています。 Q．帯状ほう疹の原因は？ 帯状ほう疹は水ぼうそうのウイルス「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされます。

子どもの頃、水ぼうそうにかかったことある人は多いと思いますが、このウイルスは感染して治ったあとも、生涯にわたって、神経節と呼ばれるところに潜伏しています。

高齢になったり、ストレスを受けたりすることで、免疫の働きが弱まったときに、潜んでいたウイルスが再び活性化して、症状を引き起こします。 Q．患者は増えている？ 帯状ほう疹は、80歳までに3人に1人がかかるとされ、患者は年々増えています。

宮崎県で行われている大規模な患者調査によりますと、調査を始めた1997年には帯状ほう疹になった人は年間で人口1000人当たり、3.61人だったのが、2022年には6.15人になっています。

コロナ禍で受診控えが起きたときに一時減ったものの、増加傾向が続いています。

また、発症率は多くの年代で上がっています。

その理由として高齢化し、免疫の働きが下がる人が多くなっていることが挙げられます。

また子どもで水ぼうそうのワクチン接種が進み、水ぼうそうになる人が減っていることも理由の1つとされます。

子どもの頃に水ぼうそうにかかって治った人が、ウイルスに触れると、免疫が強化されますが、水ぼうそうになる人が減って、その機会が少なくなっていることが影響していると考えられています。 Q．ワクチンで予防できる？ 効果が確認されているワクチンが2種類あります。

1つは、ウイルスを弱毒化した「生ワクチン」で、子どもたちが水ぼうそうの予防の際に接種するものと同じです。

接種回数は1回です。

去年、国立感染症研究所がまとめた帯状ほう疹ワクチンの「ファクトシート」によりますと、アメリカとヨーロッパのデータでは、帯状ほう疹の発症を防ぐ予防効果は50代で69.8％、また、アメリカの研究では60歳以上で51.3％となっています。

接種から5年たっても、4割程度の予防効果があるとされます。

ただ、免疫の下がっている人は接種できません。

もう1つは「組み換えワクチン」とも言われる「不活化ワクチン」で、ウイルスの表面にある一部のたんぱく質とともに、免疫の働きを高める物質が入っています。

2か月以上空けて、2回接種します。

日本を含む18か国で行われた臨床試験では、帯状ほう疹の発症防ぐ効果は50代で96.6％、60代で97.4％、70歳以上で97.9％だったとしています。

また、接種から10年たっても、7割程度の予防効果があるとされます。

免疫の状態にかかわらず接種できます。 Q．ワクチンというと、副反応が気になります。 生ワクチンの方は、接種した部位の痛みなどが報告されています。

一方で、組み換えワクチンの方は、接種した部位だけでなく、疲労やけん怠感など、他の部位や全身の症状も報告されています。 Q．定期接種の対象は？ 今年度内に65歳になる人で、具体的には1960年4月2日から1961年4月1日までに生まれた人です。

また、今年度から定期接種になったということで、65歳以上の人全員が定期接種を受けられるよう、5年間の経過措置として、年度内に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳になる人も対象です。

さらに今年度100歳以上の人やHIVに感染し、免疫機能に障害がある60歳から64歳の人も対象になっています。 Q．接種にかかる費用は？ 自費で接種すると、生ワクチンの場合、1万円程度となっています。

一方、組み換えワクチンは2回合わせて4万円程度します。

定期接種の対象の人は、自己負担額が低くなります。

お住まいの自治体によって異なりますが
▽生ワクチンなら4000円から5000円ほど
▽不活化ワクチンなら2回で2万円から2万5000円ほどのところが多くなっています。

中には、東京・港区や渋谷区のように無料にしているところもあります。 Q. 帯状ほう疹に一度かかりましたが、ワクチン接種はどう考えるべきでしょうか？ 帯状ほう疹が発症した後、治っても、2回発症する人もいるし、3回発症する人もいます。

宮崎県で長年、帯状ほう疹の患者の大規模調査を行ってきた外山望医師は、「一度発症すれば、もう発症しなくなるという病気ではないので、打ったほうがよいと考えられる」としています。

発症したあとで接種する時期については、海外では「症状が軽くなった後」とするところもある一方で、「症状が治まってから少なくとも2か月空けてから」としているところもあるということです。

ただ、体調や免疫の状態などによっても異なります。

接種については、かかりつけの医師に相談をしてください。 Ｑ．帯状ほう疹に一度かかった人にもワクチンは効果がありますか？ 帯状ほう疹に一度かかると、ウイルスに対する免疫が上がります。
帯状ほう疹の診療ガイドラインをまとめた奈良県立医科大学の浅田秀夫名誉教授は、かかった直後にワクチンを接種してもあまりメリットはないと考えられるとしています。

通常は、発症から5年から10年たつと、免疫増強効果が薄れるため、ワクチン接種は再発防止に一定の効果が期待できるということです。
ただ、免疫の下がっている人は、帯状ほう疹にかかったあと、早い時期に組み換えワクチンを接種してもよいと考えられるとしています。

また、帯状ほう疹になったあと、後遺症の痛みが続いている状態でもワクチンを接種することに問題はないとしています。 Q. 水ぼうそうになったことがない人は、帯状ほう疹にかからないのでしょうか？ 帯状ほう疹は水ぼうそうのウイルスが再活性化することで発症する病気なので、水ぼうそうになったことない人は帯状ほう疹にはなりません。

ただ、水ぼうそうにかかっても自覚のない人もいます。

本当にかかっていないか確かめる必要がありますが、外山医師は日本人の90％は原因となる「水痘・帯状ほう疹ウイルス」を保有しているという報告もあり、「ほとんどの大人は水ぼうそうにかかっていて、帯状ほう疹になる可能性があるので接種した方がいい」と話しています。 Q. 帯状ほう疹の症状を見分ける方法はありますか？ 帯状ほう疹は発疹が出ても、虫刺されやかぶれかなと思っているうちに、症状が悪化し、痛みや発疹の赤みが強くなっていくことがあるということです。

見た目だけでは判断できない場合もあり、迅速診断キットを使って判断することもあります。また、発疹が出る前で、判断が難しい場合は血液中の抗体の量を調べることもあります。

できるだけ早く、3日以内に抗ウイルス薬の投与を受け始めることが大事とされ、治療の開始が早ければ後遺症になるリスクも下げられるということです。

外山医師によりますと、症状を見分けるポイントは「皮膚に痛みなどなんらかの症状があること」「赤い発疹（ブツブツ）や水ぶくれ」で、こうした症状がみられる場合は、すぐに皮膚科などを受診すべきだとしています。

「身体の片側の皮膚に痛みを伴う発疹が出たら、皮膚科を受診してほしい」と話しています。 Q. ワクチンは一度接種したら、もう受けなくてよいでしょうか？ 厚生労働省によりますと、ワクチンの予防効果は、特に生ワクチンの場合、接種から1年後に6割程度、5年後には4割程度とされ、徐々に下がってきます。

過去に生ワクチンを打った人も、組み換えワクチンを打つことは可能です。

奈良県立医科大学の浅田名誉教授は「ワクチンの種類に応じた再接種が必要だと考えられる」としています。 Q. 合併症について教えて欲しい。 日本皮膚科学会の「帯状疱疹診療ガイドライン」などによりますと、合併症は発症した部位の近くの臓器に障害を生じる場合が多いとしています。

▽目の神経の近くに発症した場合は、結膜炎や角膜炎、視力の低下などが起き、まれに失明に至る場合もあるということです。
鼻のまわりに発疹などが見られた場合は、目の合併症になる可能性が高いということです。

▽耳の神経が傷ついた場合は、耳鳴りやめまい、難聴などになるおそれも。

まれに、
▽中枢神経系の合併症として、脳炎になるケースもあるということです。