Published: 2025-03-17 17:30

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したアンドロメダ銀河の知られざる“真実の姿”

アンドロメダ銀河は、わたしたちの暮らす地球がある天の川銀河から250万光年ほど離れたところに位置している。このように言うと、何かはるか彼方にあるように聞こえるかもしれないが、実は数ある銀河のなかで最も天の川銀河に近い銀河だ。

【画像ギャラリー】アンドロメダ銀河のパノラマ画像など

このため、空気が澄んだ秋の夜には肉眼で見ることもできる。かつて“アンドロメダ星雲”と呼ばれたそのぼやけた葉巻のような姿の見かけの大きさは、満月の6倍ほどになる。

そんなアンドロメダ銀河を米航空宇宙局（NASA）などが運用するハッブル宇宙望遠鏡が10年以上をかけて撮影してきたが、その600枚を超える画像を組み合わせて作成されたアンドロメダ銀河のパノラマ画像が公開された。今回はこのアンドロメダ銀河のパノラマ画像などに基づいて、アンドロメダ銀河の知られざる“真実の姿”を解き明かしていきたい。

アンドロメダ銀河は、天の川銀河から250万光年ほど離れたところに位置し、天の川銀河と同じようにバルジ（中心部の丸い膨らみ）とディスク（円盤状の構造）が存在している。直径はおよそ22万光年で、1兆個ほどの恒星が属していると見積もられている。

これに対して天の川銀河の直径はおよそ10万光年ほどで、1,000億～4,000億個の恒星が属していると見積られている。つまり、アンドロメダ銀河は天の川銀河の倍以上の規模を誇っていることになる。

だが、いまから100年ほど前には、アンドロメダ銀河は天の川銀河の一部であると考えられていた。この当時の天文学の常識を覆したのが、米国の天文学者エドウィン・ハッブルだ。

ハッブルは1923年、カリフォルニア州にあるウィルソン山天文台の当時としては世界最大だった口径およそ2.5mのフッカー望遠鏡を使い、アンドロメダ銀河を観測してケフェイド変光星（セファイド変光星）として知られる「V1」を発見した。ケフェイド変光星は、銀河系外の距離測定におけるスタンダードキャンドル（標準光源）として利用されることが多い。

このケフェイド変光星は周期的に明るさ（光度）が変化するが、この光度が変化する周期から真の光度を推定できる。恒星の明るさは距離が離れるほど暗くなるので、この真の光度と観測で得られた見かけ上の光度とを比較することで、変光星までの距離を推定できるというわけだ。

ハッブルは、このV1を標準光源とすることで、アンドロメダ銀河までの距離を計算した。するとアンドロメダ銀河は、当時考えられていた天の川銀河の範囲を大きく超える遠方に存在することがわかった。つまり、アンドロメダ銀河は天の川銀河の一部ではなく、天の川銀河とは別の銀河であることがわかったのである。

そしてハッブルはその後も研究を続け、「天の川銀河から遠く離れた銀河ほど、天の川銀河から速く遠ざかっている」とする宇宙の膨張に関する「ハッブル–ルメートルの法則」などを発見し、天文学に偉大な足跡を残した。

このようなアンドロメダ銀河は秒速122kmほどで天の川銀河に向かって接近しており、およそ40億年後には天の川銀河と衝突するとみられている。そして、その後は20億年ほどかけてふたつの銀河は合体し、ひとつの銀河になるとされている。