Published: 2025-06-21 21:40

ナイキに教わるハーフマラソンの走り方──基礎編

ランニング熱が再び盛り上がっている。"走る"という最も敷居が低いスポーツはどう楽しめばいいのか。ハーフマラソンへの挑戦をひとつの目標としてブレイクダウンする。

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ただ漫然と走っていないか。ランニングはエクササイズを目的としてもいいが、目標を設定するとより面白くなる。もっとも手軽なもののひとつが、ハーフマラソンへの挑戦だ。ナイキのランニングコーチである森実利にアドバイスをもらった。

ハーフマラソンに向けた準備期間として「おおよそ2カ月あれば完走を目指すことができる」というのが、森コーチが考える最低ライン。これは初心者が基礎体力を構築し、必要な走行距離を段階的に伸ばしていくのに必要な期間である。

練習頻度は、週3〜4回。毎日走る必要はなく、むしろ回復日を設けることで怪我のリスクを減らし、質の高い練習を継続できる。重要なのは「目的に応じて走行距離と頻度」を調整することで、無理な練習量でカラダを壊すよりも、継続可能なペースで着実に体力を向上させよう。

■トレーニング方法

ハーフマラソンに向けたトレーニングは強度別に組み立てることが効果的だ。森実利コーチによると「低強度、中強度、高強度」という3つのカテゴリーでメニューを構成する。低強度では40分から60分の軽いジョギング（1km7分程度）、中強度では決められたペースで決められた距離を走るテンポ走、高強度では1kmのインターバル走などのスピード練習を行う。

また普段の練習では「いつもフレッシュな状態で走るだけじゃなくて、あえて疲れさせた状態で走る」も大切だという。これによりレース後半の走りを体験でき、大会当日のオーバーペースの防止にもつながる。また、疲労状態での走行練習は、実際のレースでの後半戦に備える貴重な経験となる。

「さらにペース配分への理解が大事です。21kmというと、初心者からすると途方もない距離をどれぐらいのペースで走るのか。目安としては1kmを7分で走るというのが、ランニングをする上で会話ができながらやれるペース」と森実利コーチは説明する。この基準が設定される理由は、単に快適性だけでなく、レースの制限時間という現実的な要素も関係している。「ほとんどのレースに制限時間があります。それをクリアする上で基準になっているのが、やっぱりこのくらいのペース」なのだ。

初心者にとって最も重要なのは、オーバーペースを避けることである。「最初の5kmぐらいはウォーミングアップだと思って走るぐらいがちょうどいい。特に男性ランナーは最初に飛ばしてしまう傾向があり、後半の失速につながりやすいんです」という。理想的なのは「ネガティブスプリット」と呼ばれる、前半よりも後半のペースが速くなる走り方である。

■栄養素について

ランナーにとって重要な栄養素は「タンパク質、その吸収を助けるビタミンC、そして鉄分」と森コーチは続ける。タンパク質は筋肉の修復に不可欠で、ビタミンCはその吸収を促進する。鉄分は「ランナーの場合は、どうしてもカラダにインパクトがある競技なので必要になってくる」と、性別を問わず重要な栄養素だ。

食事の基本方針は“体脂肪を下げて走りやすくする”ことにある。体重が軽くなることで走行時の負担が減り、より自分の体重が落ちればそのほうが快適に走れる。そのためには「抗酸化作用のあるもの」を積極的に摂取し、「揚げ物などの酸化しやすいもの」を避けることが推奨される。

タンパク質摂取においても調理法が重要で、「トンカツより、ボイルした鶏肉の方が良い」というように、同じタンパク質でも酸化しにくい形で摂取することが大切だ。栄養バランスを考慮しながら体重管理も並行して行う必要がある。ランニングは高い酸化ストレスを伴うスポーツのため、抗酸化物質の積極的な摂取は長期的な健康維持にも寄与する。

■ランニングに必要なシューズとウェア

森コーチにシューズ選びについて訊く。「1足よりも使い分け、履き分けがあった方がいい」というのが基本的な考え方だ。練習の強度に応じてシューズを変えることで、シューズの寿命も延び、より効果的なトレーニングが可能になる。低強度の練習ではクッション重視モデル、中強度ではバランス型、高強度ではスピード重視のモデルといった具合に使い分けてもいい。今回トレーニングのメインシューズはクッションに優れたナイキ ボメロ 18を選んだ。ソール厚が46mmとクッショニングに優れたシューズだ。足入れをした当初、甲高の自分にとってはシュータンの厚さが気になったが、履きなれると気にならなくなる。それよりも面でとらえて包み込むような衝撃吸収能力に驚く。多少、着地をブレても走りに影響がないと思うほどである。

ウェアも専用のものが快適だ。Tシャツも機能性を重視したい。シューズ、ウェアともに練習期間中に「2〜3着、2〜3足」の選択肢を試し、自分に最適なものを見つけることだ。

「レースで初めて履くのではなく、慣れたものが安心です。距離が長くなると“擦れたり、当たったり”する箇所が出てくるため、事前の試着と実走での確認が欠かせません。レース当日は“何で走りたいか”を明確にしておき、それに向けた準備を整えましょう」

■我流卒業

河川敷や皇居など人気ランニングコースを走ってみると、着古したコットンのTシャツで走ったり、普段履きのスニーカーを履いて走っているランナーの姿を見かけた。なかには首にタオルを巻いている人もいる。ランニングは走るだけ、というハードルの低さだからこそ我流の人が多い。

しかし、ハーフマラソンという目標を設定したなら、適切な知識と準備が不可欠だ。「準備が8割」という森実利コーチの言葉通り、練習計画、身体作り、ケア、そして適切なギア選びといった準備がしっかりできていれば、「気づいたら走れるカラダになってレースを迎えられる」のである。

単に走るだけでは、ランニングの本当の面白さにはなかなか到達できない。今の時代に沿ったアプローチと正しい知識に基づいたトレーニングを実践することで、より安全で効果的にハーフマラソンの目標達成が可能になる。