Published: 2025-02-10 11:01

新型レクサスLXの“ハイブリッド化”はアリなのか？ 和製高級オフローダーの進化に迫る

レクサスのフラッグシップオフローダー「LX」が、大幅改良を受けた。ひと足先にアメリカで試乗した島下泰久がリポートする。

【写真を見る】新型LX700hの新グレード「OVERTRAIL」の全貌（38枚）

レクサスのフラッグシップオフローダーであるLXが一部改良を発表したのは昨年の10月。日本での発売開始も間近と言われる中、アメリカはカリフォルニア、ナパバレー周辺で開催されたそのプレス向け試乗会に参加して、ひと足先にその進化を体感した。

新型の一番の注目点と言えば、やはり初のハイブリッド車の設定だろう。その名はLX700h。今回の試乗会も、用意されていたのはすべてこの車両だった。

引き続きラインナップされるLX600と同じV型6気筒3.5リッターツインターボエンジンと10速ATの間に、新たに1基の電気モーターユニットを挟み込んだハイブリッドシステムは、トヨタが北米で販売しているピックアップトラック「タンドラ」などに積まれているものがベースとなっている。

ただし、単にそのまま搭載しているわけではない。目指されたのはLXの走破性、耐久性、信頼性を犠牲にしない電動化である。

例えば車体後端に積まれるバッテリーは防水パックの中に収められており、700mmという渡河水深性能はLX600と同等。しかも浸水を感知した際にはすぐに警告が発せられるようになっている。また、万一ハイブリッドシステムが故障した際に走行不能になっては困るというわけで。電気モーターを積むハイブリッド車なら本来は不要なスターターモーター、オルタネーターが、敢えて装着されているといった具合だ。

スペックも大幅に強化されている。システム最高出力はLX600の408psから457psへ、最大トルクは650Nmから790Nmへと増強。V型8気筒ユニット並みの走りを、一層の低燃費で実現するのが開発の狙いだったという。

今回はこのLX700hを、こちらも新たに設定されたオフロード性能を強化したグレード「OVERTRAIL」で主に試した。足元にはオールテレインタイヤを履き、フロント、センター、リヤの3つのデフロックを備えた、”リアルオフローダー“である。

一般道を走り始めてまず気づいたのは、実はパワートレインと同じかそれ以上にシャシーが進化しているという点だった。端的に言って乗り心地が、より引き締まって、それでいて上質さを増している。

聴けば、フルフレーム構造のその車体は「対話のできる走り」を目指して、各部の剛性アップを実施。また、フレームとキャビンを接合する部分のキャブマウントクッションは、こじる方向への動きだけ規制して乗り心地と操縦性の両立を図るなど、まさに微細を穿つ改善が図られているという。なお、パワートレイン以外の変更は、LX600にも適用される。

上屋のゆさゆさとした動きが減った乗り心地は、とても快適。操舵したときの応答性もシャキッとクリアになって、意のままに操れる感覚がぐんと高まっている。きっと、誰もが「上質になった」と、感じるに違いない。

動力性能も余裕を増した印象だ。特に電気モーターの存在を感じるのはアクセルを踏み込んだ領域で、もっと力をというこちらの気持ちを読んだかのようにグイッとトルクが立ち上がり、豪快な加速感を楽しませてくれる。

実はこの味付け、北米仕様専用。牽引などの際に求められる特性に合わせたのだそうで、日本を含むその他の仕向地には、発進の瞬間から電気モーターの後押しをより強く感じられる仕様が用意される。共通のハードウェアでそれを実現できるのは、電動車ならではだ。

特設コースで試したオフロード性能も、やはり大したものだった。オールテレインタイヤのおかげもあって、あいにくの雨で泥と化したコースを、ぬるぬると滑りながらも確実に前に進んでいき、デコボコのモーグルも岩場も、クルマが大きく傾くバンクも大きな水たまりすらも難なく走破してしまう。しかも、その時の乗り心地が、大きな入力もカドを感じさせたりすることなく、また良いのである。

今回、ハイブリッド化によって低速域での電気モーター走行が可能になったことで、より力強く、そして繊細に駆動力を出し入れできるようになった。つまり電動化で、オフロード走破性はむしろ磨きがかかっているのだ。

試乗時間を振り返ると、LX700hがハイブリッド化によって失ったものはまったく無かったというのが、偽らざる結論である。乗り味は上質で、パワーも燃費も高まり、オフロード性能だって一層の高みに到達している。強いて言えば車重が160kgほど増加しているが、前述の通り燃費はむしろ良くなっているし、乗り味への悪影響だって皆無と言っていい。完成度の高さには正直、舌を巻いた。

さて、LXと言えば現行モデルは発表直後からオーダーが殺到し、長い納車待ちの列ができることとなった。それにも関わらず、今回の一部改良のタイミングでは、なんと新規の受注も行なわれるようだ。混乱を避けるために抽選などのかたちになりそうだが、それでも朗報であることは間違いない。