Published: 2025-04-11 20:32

石川の指定避難所すべて閉鎖へ 能登半島地震・豪雨災害で開設

能登半島地震や豪雨災害を受けて石川県内の自治体は「指定避難所」を開設して被災者を受け入れてきましたが仮設住宅の整備を終えたことなどから、13日ですべて閉じられることになりました。今後、被災者の支援は恒久的な住まいの確保などに、より重点が置かれることになります。

去年1月の地震を受けて石川県内の自治体は体育館や公共施設などに「指定避難所」を開設し、県によりますと受け入れた被災者が最も多い時は去年1月4日の時点で、「自主避難所」なども含めると364か所、3万4173人に上りました。

その後、仮設住宅の建設や自宅の再建などが行われ、地震の発生から1年3か月後の今月1日までに避難する人はいなくなり、地震による「指定避難所」はすべて閉じられました。

一方、去年9月の豪雨災害を受けて「指定避難所」が新たに開設されましたが、復旧の動きが進んだことなどで10日の時点で輪島市の1か所に5人が生活しています。

輪島市は仮設住宅の整備を終えたことなどから、この「指定避難所」を13日閉じる方針です。

これによって、去年1月の地震発生以降、石川県内で開設された「指定避難所」はなくなることになります。

また輪島市によりますと、高齢者や障害のある人を受け入れる1か所の「福祉避難所」も13日閉じる方針で、これで県内の「福祉避難所」もなくなることになります。 県によりますと地震と豪雨災害の被災者を対象にした仮設住宅には今月10日の時点であわせて1万3945人が生活しています。

自宅が全壊するなど再建が難しいという人も多く、被災者の支援は仮設住宅を出た後の恒久的な住まいの確保などにより重点が置かれることになります。 “住まいの見通し立たず”相次ぐ声 すべて閉じられることになった「指定避難所」。

仮設住宅に移る被災者からは自宅の再建が難しく今後の住まいがどうなるのか、見通しが立たないという声が相次いでいます。 山崎正明さん（77）は、11日午後、輪島市の大屋小学校の体育館に設けられた「指定避難所」から先月、完成した輪島市釜屋谷町の仮設住宅に移りました。

去年9月の豪雨災害で被災し、この避難所で半年余り生活してきましたが、11日は避難所にあった衣類などの荷物を仮設住宅の部屋に運び入れる作業を行いました。

山崎さんは輪島市の自宅に妻と2人で暮らしていましたが去年1月の能登半島地震では自宅の一部が壊れ、豪雨災害では大量の土砂や流木が流れ込み、自宅は全壊しました。今後、公費解体が行われる予定です。 豪雨災害のあと妻は金沢市に住む娘と一緒に生活しているといいます。

山崎さんは住み続けた輪島市を離れたくないという気持ちが強い一方で、77歳という年齢を考えると自宅を新たに建て直すことは簡単ではないと感じています。

石川県によりますと仮設住宅の入居期限は原則2年とされていて、仮設住宅を出た後の住まいがどうなるのか、見通しが立たないと不安を募らせています。 山崎正明さん
「自宅の被害があまりにひどかったので、これからどうすればいいのか、まだ考えられずにいます。仮設住宅で暮らし始めれば、少し落ち着いて一歩踏み出せるかもしれません」 体調悪化や不安などの相談も相次ぐ 石川県内の仮設住宅で見守り活動を行う団体には慣れない生活による体調の悪化や不安などの相談が寄せられ、自治体などと連携して支援を続けています。 「青年海外協力協会」は輪島市から委託を受けて地震と豪雨災害の被災者が生活する市内の3100戸余りの仮設住宅で見守り活動を行っています。

協会のスタッフやボランティアなど20人余りが仮設住宅を訪問し、被災者から健康状態の聞き取りや生活などの相談に応じています。

高齢者の1人暮らしが多く、慣れない生活で体調を崩したり、眠れないなどの不安を訴えたりする相談が相次いでいます。 被災する前にあった近所の住民などとの交流がなくなり、外出する機会が少なくなったという被災者もいて孤立しないように、仮設住宅に住む被災者どうしをつなぐ取り組みも進めています。

また今後の住まいの確保や生活再建のめどがたたないことに悩んでいる被災者も多いということです。

団体では被災者の健康状態や悩みを把握したうえで状況に応じて医療機関や輪島市、それに弁護士会などと情報を共有し、治療や心のケア、それに支援制度の活用につなげる活動を続けています。

訪問を受けた76歳の男性は「見守りの活動で生活などについて相談できる機会があるので安心できます」と話していました。 「青年海外協力協会」の災害支援チーム 細川貴子さん
「仮設住宅には高齢者の世帯が多く2日ぶりに部屋から外に出たとなどという声を聞きますが、周囲の人と話す機会をつくることがとても重要だと考えています。見守りの訪問活動を通じた支援を続けていきたい」 専門家「交流の場つくるなど支援必要」 仮設住宅の現状や支援の課題に詳しい専修大学の佐藤慶一教授は、被災者が孤立しないように交流の場をつくるなどきめ細かい支援が必要だと指摘します。

佐藤教授は「被災者が仮設住宅に移ったり、応急修理した自宅で暮らしたりするほか、子どもが住んでいるほかの地域に移り住んだりするともともとの地域が分断される状況が起きやすい。仮設住宅の中でどうコミュニティーをつくっていくかが重要だ」と話しています。

そのうえで「自宅の再建はいつごろになるか、どれくらいお金がかかるか、町をどうしていくかなどを考えていく必要がある。そうした情報がわからないと結果として生活の再建にすごく時間がかかり、住民が離れ離れになってしまうことも懸念される。再建に向けて、いろいろな情報の支援や話し合いの場をつくっていくことが求められる」としています。

また「医療機関やスーパーなど生活に必要な施設で住民が集まることができる場所を徐々に整えることが必要だ。まわりにそうした施設を整備していくことが求められると思う」と話しています。