Published: 2025-01-27 18:02

NASAの技術から「スピンオフ」して作られた製品──ワイヤレスヘッドフォンからコードレス掃除機まで

宇宙開発に関連する米航空宇宙局（NASA）の技術から「スピンオフ」してつくられた製品は、わたしたちの生活のなかにも浸透している。そのいくつかの例をみてみよう。

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宇宙探査が膨大な資源を消費することに、疑問を感じる人も多いかもしれない。しかし、科学的発見がもつ独自の文化的価値や、宇宙関連の取り組みが生む国際的な協力、さらには宇宙産業が技術や経済に与える重要な影響は、非常に貴重であるという意見も多い。そして特筆すべきは、宇宙研究がなければ存在しなかった日常的なアイテムが、数多く存在するという点だ。

米航空宇宙局（NASA）はこれまで、宇宙開発研究の技術がスピンオフ（民生転用）された実例を、「Spinoff」という出版物やサイトを通じて紹介してきた。ここでは、そのいくつかを紹介する。

宇宙飛行士の食の安全を保証するため、NASAは1960年代初頭から、焼き菓子やベーキング用品で知られる企業、ピルズベリーと協力していた。そこで生まれたのが、食品の生産過程全体を監視し、汚染から守るための危害分析重要管理点（HACCP）による衛生管理システムだ。このシステムは当初、宇宙ミッションでのみ使用されていたが、後に米国の食品業界に導入され、1970年代には欧州にも広がった。

アポロ計画の機体で使われたアルミホイルのような素材は「スペースブランケット」として知られている。多層断熱材をつかったこの技術はその後、緊急用の防寒衣料などにも使用されるようになった。

アポロ計画の熱シールドは、アポロが地球に再突入する際のエネルギーを散逸させることを可能にする素材で作られていた。Avcoが開発したこの素材はその後、耐火塗料や飛行機のカバー、さらには建物内で火災の拡大を抑える鋼製カバーにも利用されている。

月面の岩を集めるため、NASAは小型のポータブルドリルが必要だった。その設計を担当した工具メーカーであるブラック＆デッカーは、モーターの最適化を図り、電力消費を最小限に抑える方法を見つけた。その結果、最初のコードレス掃除機のひとつである「ダストバスター」が誕生した。