Published: 2025-04-10 20:31

新型ダイハツ アトレー・デッキバンに、価格を超えた価値がある理由とは？

ダイハツの新型「アトレー・デッキバン」に今尾直樹が試乗した。ビジネスにもレジャーにもピッタリな軽自動車の実力に迫る！

【写真を見る】アトレー・デッキバンの全貌

ドアを開けて乗り込むと、室内はゴージャスで、軽の悲壮感は微塵もない。タコメーターも付いているし、ダッシュボード中央には9インチのスマホ連携ディスプレイ（¥82,500のオプション）が鎮座したりしている。そのディスプレイの下のほうにあるシフトレバーをDレンジに入れ、足踏み式パーキングブレーキを解除していざ出発。

出足からして活発なのは、アトレー・デッキバンは3気筒エンジンをインタークーラー付きターボチャージャーで過給しているからだ。このKF型は自主規制枠一杯の最高出力64psと最大トルク91Nmを発揮し、軽としては重量級の1000kgのボディを加速させる。乗り心地はストローク感こそあまりないものの、最大積載量250kgの軽4ナンバー車としては上々で、静粛性もかなり抑えられている。145/80R12サイズの細くて、空気のいっぱい入ったタイヤとサスペンションがうまいこと路面の凸凹をいなしている。

ステアリング・フィールも、後輪駆動ベースであることも幸いしてだろう、ダイハツ「ミラ・イース」よりイーす。CVTの制御も、これまた後輪駆動ベースということもあって、エンジン横置きFWDみたいなピョコタンと、不意に加速する、みたいな動きが出ない。とってもスムーズである。

ただし、この直前に試乗したミラ・イースと較べ、エンジンの真上に乗っているという基本構成上、微妙な振動がどうしても伝わってくる。3気筒ターボは低速からトルクがあるので、あまり回す必要がないから、最初は静かに感じる。それに気づいた意地悪じーさんの私はあえてエンジンをぶん回す。すると、やっぱり室内に騒音が侵入しやすい、というアラを見つけたりして悦にいる。シートのクッションは厚めでも、その下は鉄板なので、お尻に鉄板のフィールが伝わってきたりもする。

しかして試乗しているうち、それはごく短い時間ではあったけれど、微妙なエンジン音や路面の凸凹からくる振動が、「自動車に乗っているぜ」というライブ感につながり、これはこれで楽しい！ オモシロい！ と、思えてくる。ミッドシップだけあって、前後重量配分は52:48と、リヤのほうが重いということはないにしてもバランスがよさげで、ステアリングの反応も上々でもある。

弱点は80km/h以上で、まっすぐ走らない雰囲気があることだ。4WDなのに!? これはボディのリヤクオーターのピラー部分をカットしたことによって、剛性が落ちているかららしい。しかし、それでよいのだ。という割り切りがダイハツにはある。実際デッキバンはこれまで40年弱、おそらくそうだった。

今回の取材で筆者は初めて知ったのだけれど、初代デッキバンは街の電気屋さんからの要望で生まれたのだという。なんのために？

冷蔵庫を配達するためだ。なるほどなぁ。知りませんでした。街の電気屋さんの配達用だから長距離を走るわけでなし。お客さんの冷蔵庫を後ろに載せてぶっ飛ばすわけにもいかない。80km/h出れば御の字。そうやって生まれたハイゼット/アトレーのデッキバンは、いまや趣味、レジャー用としても認知され、月400〜500台売れているという。エンスーのひとがそれだけ増えた……のかもしれない。

私的にはこれを自家用に使うひとのライフスタイルが羨ましい。ステキじゃないですか、家庭菜園とか庭の手入れとかウィンタースポーツとかマリンスポーツとか。車両価格は2WDで¥2,002,000、パートタイム4WDで¥2,156,000。価格を超えた価値があると思う。