Published: 2025-03-05 20:40

新型メルセデスAMG GT43クーペは4気筒でも問題ナシ！ 気筒数で性能を語るのが時代遅れかもしれないワケとは？

新型メルセデスAMG「GT」に加わった「43」モデルに、小川フミオが試乗した。4気筒とは思えぬ走りに迫る。

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メルセデスAMGの日本におけるラインナップに、新たにGT43クーペが、2024年11月に追加された。従来の4.0リッターV8搭載のGT63 4MATIC＋クーペに対し、2.0リッター4気筒で、しかもボディはちょっとスリム。実がはこれがいいフィーリングを生み出しているのだ。

新型GT43クーペは、広いエンジン回転域でパワーを生み出す電動ターボチャージャーをそなえ、9段のデュアルクラッチ（2ペダル）が組み合わされる。

1991cc4気筒エンジンには、スタータージェネレーターモーター（BSG）が搭載され、発進や急な加速時などにトルクを積み増す。昨今はマイルドハイブリッドというと、燃費を追求した簡便なハイブリッド車と思われがちだ。

先駆け的なメーカーのひとつであるメルセデス・ベンツが最初に採用したときは、しかし（燃費も目的ではあったものの）小さめの排気量のエンジンにパワーを与える有効な手段と喧伝された記憶がある。

小さなエンジンは、クルマの運動性にとって重要な軽量化に寄与する。発進時に作動するモーターがあれば、ターボチャージャーはあえて大型化でき、上の方の回転域で効きはじめる。つまり広い回転域でパワフルなエンジンにできる。

新型GT43クーペのエンジンにつけられたターボチャージャーは、モーターでターボ内のタービンホイールの回転を、モーターの力を使って最適制御するというもの。大きめのターボのデメリットとして回転が低くなると、排気の負圧が下がり、ターボがお休みしてしまうことがある。

新型GT43クーペの電動ターボは、低回転域でもゆるゆるとタービンを回転させておき、いざというとき（アクセルペダルを強く踏み込んだとき）一瞬でモーターが反応してターボチャージャーが適切な回転でまわり、エンジントルクが盛り上がる。これがメリットだ。

車体の全幅はGT63より55mm狭い1930mmで、取り回しがよりよくなっている。さらに、キャビンも、2+2。日常の使い勝手において、いくつもの点で優れているといえる。

巨大なグリルと、メルセデスAMGモデルのアイコンともいえる、縦のスロット、それに巨大なメルセデス・ベンツのエンブレムが目をひく。メルセデスAMGの専用開発モデルだが、専用のエンブレムは（まだ？）用意がない。知っている人は、縦スロットグリルで、メルセデスAMGモデルと識別するのだ。

もうひとつの視覚的長所は、伸びやかなボディスタイリング。全長4730mmの車体で、長いノーズと、小ぶりのキャビン、それに20インチの大径ロードホイールと組み合わせたタイヤが目をひく。

スキンといってボディ表面の表現はあたらしいが、プロポーションは伝統的なスポーツカーをなぞっていて、誰がみても、魅力的と感じるスポーツカーになっている。

新型GT43クーペをドライブすると、1.8tの車重をまったく意識させない。ひとことでいうと、操縦感覚は軽快。昔のクルマ好きにとって、2.0リッター4気筒でこの走り、というのは信じられないだろう。

先述のとおり、小さめのエンジンをフロントに搭載するメリットとして、ハンドリングが素直で気持ちよく、カーブが連続する道を走るのが楽しい。

エンジン音はややがさつ……と、言えないこともないけれど、スムーズな回転とともに、トルクが気持ちよく出てくるし、ダイレクト感があって、これは私の好み。

試乗車は、クロスステッチ（菱形の刺繍）をほどこされた白色のシートで、ステアリングホイールやダッシュボード下部も同じ色で、見た目のはなやかさがよい。座り心地も、からだのホールド性も良好で、乗っていて、気分が晴れ晴れとしてくる。

いまのメルセデスAMGのラインナップにあっては、フルオープンの「SL」のクーペ（固定式ルーフ）のような位置づけで、どちらを選ぶべきかは、ボディスタイルの好みで決めるといいだろう。

メルセデスAMG GTのラインナップは、頂点にGT63 S Eパフォーマンス・クーペ」（¥30,850,000）という4.0リッターV8にプラグイン・ハイブリッドシステムを組み合わせたモデルがあり、その下に4.0リッターV8のGT63 4MATIC＋クーペ（¥27,500,000）。そして今回の2.0リッター4気筒エンジン搭載のGT43クーペの、¥16,500,000だ。

エンジン排気量や気筒数が上級かどうかを決める時代ではないので、むしろフィールの違いで、どのクルマが自分の嗜好に合うか、決めるといいだろう。