Published: 2025-02-05 17:30

NASAの探査機がとらえた火星の“激しすぎる春”の訪れ

火星では氷が固体から気体に直に昇華することから、春の訪れが非常に“活発”なものになる。このほど春を迎えた火星の“激しすぎる春”の様子を、米航空宇宙局（NASA）の火星探査機が撮影した画像に基づいて紹介しよう。

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火星の自転軸は25度ほど傾いているので、地球と同じように“四季”がある。ただし、火星の1年は長く、地球のおよそ687日に相当する。このため、そのぶんそれぞれの季節は長くなることが特徴だ。

そんな四季を伴う1年を火星の北半球が2024年11月12日に終え、新しい春を迎えた。火星では新年と共に春が訪れる。ただし、火星の春の訪れは地球のように穏やかなものではなく、非常に活発だ。

米航空宇宙局（NASA）のジェット推進研究所（JPL）で惑星の表面を研究するセリーナ・ディニエガは、「火星の北半球に春が訪れるときに起きる現象は、すべて爆発的です」と火星の北半球における春の訪れについて説明する。

火星の大気は非常に希薄なので、水の氷や二酸化炭素の氷は気温が上昇すると固体から気体に直に変化する。このときに発生するエネルギーが、非常に活発な春の訪れを引き起こすのだ。

このような火星の北半球における“爆発的”な春の訪れについて、NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した画像を中心に紹介していこう。

この画像はマーズ・リコネッサンス・オービターが2015年に撮影したもので、長さ20mほどの二酸化炭素の霜の塊が崖から落下していく様子がとらえられている。

春になると火星では気温が上がり、氷にヒビが入って割れる。このため春の火星では、このような“雪崩”がよく起きるという。

「20年近くも火星を観測し続けているマーズ・リコネッサンス・オービターのおかげで、わたしたちはこの雪崩のようなドラマチックな光景をとらえることができるのです」と、ディニエガは解説する。

二酸化炭素の氷に太陽光線が当たると、二酸化炭素の氷を通り抜けた太陽光線によって二酸化炭素の氷の下にある地面が温められ、温度が上昇した地面に最も近い二酸化炭素の氷が固体から気体へと直に昇華し、ガス化した二酸化炭素によって圧力が高まる。そして限界を超えると、砂とちりを伴った二酸化炭素のガスの爆発的な噴出が起きる。

なお、この黒っぽい扇形の間欠泉の見ごろは、南半球に春が訪れる2025年12月ごろになる。南半球で発生する同様の間欠泉はもっと大きく、はっきりと見えるからだ。