「むかしむかし“円”が世界で一番強かった頃……」公開から30年、岩井俊二が振り返る『スワロウテイル』の時代
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春秋
しゅんじゅう
1. spring and autumn; spring and fall 2. years; age
×10
作品
さくひん
work (e.g. book, film, composition, etc.); opus; performance; production
×6
文芸
ぶんげい
1. literature 2. the arts; art and literature; liberal arts
N2×4
移民
いみん
1. emigration; immigration 2. emigrant; immigrant
N1×4
製作
せいさく
manufacture; production
N2
『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などで知られる、映画監督の岩井俊二氏。その初期作『スワロウテイル』への思いを語る。
◆◆◆
長編2作目の監督作品『スワロウテイル』が、9月で公開から30年を迎えました。
映画は単年度での評価が基本で、どんどん新しい作品が出ては消えていく。ところが本作は今年、4Kリマスター版として映画館で再上映してもらえることになりました。自分が作品のことを覚えているのは当たり前ですが、ほかにも覚えていてくれた人がたくさんいたということで、本当にありがたく感じています。
今回、改めて作業する過程で思ったのは、自分の中で一番初々しい作品ということ。企画自体は私がテレビの仕事をしていた時代、たくさんの方が観てくれたドラマ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(1993年)を製作する前からありました。「いち映画ファンとして映画を作ったら、どんな映画がいいだろう」という、製作当事者ではない側の映画愛が込められていることもあり、ちょっと照れくさい気持ちが強いです。
『スワロウテイル』の舞台は、円がもっとも強かった時代の架空都市「イェンタウン」。ここに出稼ぎに来る移民たちが主役です。
日本人は戦後、非常に豊かな生活を手に入れましたが、そのありがたみを徐々に忘れていった。健康そうでいて、実は病院並みに手厚く介護される場所で飼育されているような、不健康な状態に陥ってしまったのではないか。そういう思いがありました。移民たちをメインキャストに据えたのは、当時の日本のそうした「気持ち悪さ」から脱出するアウトローを描きたかったからなんです。
それから時が経ち、いまや日本は経済で立ち遅れ、かつての豊かさを失いつつあります。
「むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃──」というナレーションで『スワロウテイル』は始まります。当時は「こんなこと言ってるけど、弱くなるなんてあるのかよ」と思いながら作っていました。誰もが円の強さを信じて疑わない時代、それをカリカチュアライズ(戯画化)していただけで、円がこれから弱くなる、なんて洞察は一切ありませんでした。あの頃は1ドル90円くらいの感覚でしたから、公開時と今とでは作品の観方がまったく変わってしまいました。
※約1600字の全文は、は月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年10月号に掲載されています(岩井俊二「 円安時代の『イェンタウン』 」)。
『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などで知られる、映画監督の岩井俊二氏。その初期作『スワロウテイル』への思いを語る。 ◆◆◆ 長編2作目の監督作品『スワロウテイル』が、9月で公開から30年を迎えました。 映画は単年度での評価が基本で、どんどん新しい作品が出ては消えていく。ところが本作は今年、4Kリマスター版として映画館で再上映してもらえることになりました。自分が作品のことを覚えているのは当たり前ですが、ほかにも覚えていてくれた人がたくさんいたということで、本当にありがたく感じています。 今回、改めて作業する過程で思ったのは、自分の中で一番初々しい作品ということ。企画自体は私がテレビの仕事をしていた時代、たくさんの方が観てくれたドラマ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(1993年)を製作する前からありました。「いち映画ファンとして映画を作ったら、どんな映画がいいだろう」という、製作当事者ではない側の映画愛が込められていることもあり、ちょっと照れくさい気持ちが強いです。 『スワロウテイル』の舞台は、円がもっとも強かった時代の架空都市「イェンタウン」。ここに出稼ぎに来る移民たちが主役です。 日本人は戦後、非常に豊かな生活を手に入れましたが、そのありがたみを徐々に忘れていった。健康そうでいて、実は病院並みに手厚く介護される場所で飼育されているような、不健康な状態に陥ってしまったのではないか。そういう思いがありました。移民たちをメインキャストに据えたのは、当時の日本のそうした「気持ち悪さ」から脱出するアウトローを描きたかったからなんです。 それから時が経ち、いまや日本は経済で立ち遅れ、かつての豊かさを失いつつあります。 「むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃──」というナレーションで『スワロウテイル』は始まります。当時は「こんなこと言ってるけど、弱くなるなんてあるのかよ」と思いながら作っていました。誰もが円の強さを信じて疑わない時代、それをカリカチュアライズ(戯画化)していただけで、円がこれから弱くなる、なんて洞察は一切ありませんでした。あの頃は1ドル90円くらいの感覚でしたから、公開時と今とでは作品の観方がまったく変わってしまいました。 ※約1600字の全文は、は月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年10月号に掲載されています(岩井俊二「 円安時代の『イェンタウン』 」)。
『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などで知られる、映画監督の岩井俊二氏。その初期作『スワロウテイル』への思いを語る。 ◆◆◆ 長編2作目の監督作品『スワロウテイル』が、9月で公開から30年を迎えました。 映画は単年度での評価が基本で、どんどん新しい作品が出ては消えていく。ところが本作は今年、4Kリマスター版として映画館で再上映してもらえることになりました。自分が作品のことを覚えているのは当たり前ですが、ほかにも覚えていてくれた人がたくさんいたということで、本当にありがたく感じています。 今回、改めて作業する過程で思ったのは、自分の中で一番初々しい作品ということ。企画自体は私がテレビの仕事をしていた時代、たくさんの方が観てくれたドラマ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(1993年)を製作する前からありました。「いち映画ファンとして映画を作ったら、どんな映画がいいだろう」という、製作当事者ではない側の映画愛が込められていることもあり、ちょっと照れくさい気持ちが強いです。 『スワロウテイル』の舞台は、円がもっとも強かった時代の架空都市「イェンタウン」。ここに出稼ぎに来る移民たちが主役です。 日本人は戦後、非常に豊かな生活を手に入れましたが、そのありがたみを徐々に忘れていった。健康そうでいて、実は病院並みに手厚く介護される場所で飼育されているような、不健康な状態に陥ってしまったのではないか。そういう思いがありました。移民たちをメインキャストに据えたのは、当時の日本のそうした「気持ち悪さ」から脱出するアウトローを描きたかったからなんです。 それから時が経ち、いまや日本は経済で立ち遅れ、かつての豊かさを失いつつあります。 「むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃──」というナレーションで『スワロウテイル』は始まります。当時は「こんなこと言ってるけど、弱くなるなんてあるのかよ」と思いながら作っていました。誰もが円の強さを信じて疑わない時代、それをカリカチュアライズ(戯画化)していただけで、円がこれから弱くなる、なんて洞察は一切ありませんでした。あの頃は1ドル90円くらいの感覚でしたから、公開時と今とでは作品の観方がまったく変わってしまいました。 ※約1600字の全文は、は月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年10月号に掲載されています(岩井俊二「 円安時代の『イェンタウン』 」)。
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×10
作品
さくひん
work (e.g. book, film, composition, etc.); opus; performance; production
×6
文芸
ぶんげい
1. literature 2. the arts; art and literature; liberal arts
×6
春秋
しゅんじゅう
1. spring and autumn; spring and fall 2. years; age
×4
岩井俊二
いわいしゅんじ
Iwai Shunji (1963-) (person)
×4
思い
おもい
1. thought 2. imagination; mind; heart
×4
公開
こうかい
opening to the public; making available to the public; putting on display; exhibiting; showing (play, movie, etc.); holding (interview, etc.); open; public
×4
一番
いちばん
1. number one; first; first place 2. best; most
×4
製作
せいさく
manufacture; production
×4
移民
いみん
1. emigration; immigration 2. emigrant; immigrant
×4
豊か
ゆたか
1. abundant; wealthy; plentiful; rich; affluent 2. very; extremely; full of; great
×4
当時
とうじ
at that time; in those days
×4
頃
ころ
1. (approximate) time; around; about; toward 2. suitable time (or condition)
×4
なんて
1. how ...!; what ...! 2. what?; what's that?
×2
花嫁
はなよめ
bride
×2
映画監督
えいがかんとく
movie director; film director
×2
初期
しょき
1. early (days); initial stage 2. initial
×2
語る
かたる
1. to talk about; to speak of; to tell; to narrate 2. to recite; to chant
×2
長編
ちょうへん
long (e.g. novel, film)
×2
監督
かんとく
1. supervision; control; superintendence; direction 2. director; superintendent; supervisor; coach; foreman; manager; overseer; controller; boss
×2
評価
ひょうか
1. valuation; appraisal; evaluation; assessment; estimation; rating; judging 2. appreciation; recognition; acknowledgement; rating highly; praising
×2
基本
きほん
basics; fundamentals; basis; foundation
×2
本作
ほんさく
this piece; this work
×2
版
はん
1. edition; version; printing; impression; implementation (e.g. software) 2. plate; block; cast
×2
再
さい
re-; again; repeated; deutero-; deuto-; deuter-
×2
上映
じょうえい
1. screening (a movie); showing 2. to screen a movie
×2
当たり前
あたりまえ
1. natural; reasonable; obvious 2. usual; common; ordinary; commonplace; the norm
×2
本当
ほんとう
1. truth; reality; actuality; fact 2. proper; right; correct; official
×2
有り難い
ありがたい
grateful; thankful; welcome; appreciated; evoking gratitude
×2
感じる
かんじる
to feel; to sense; to experience
×2
改めて
あらためて
1. another time; again; over again; once again; anew 2. formally; especially; intentionally; deliberately
×2
作業
さぎょう
work; operation; manufacturing; fatigue duty
×2
過程
かてい
process; course; mechanism
×2
初々しい
ういういしい
innocent; naive; artless; unsophisticated; pure; fresh
×2
企画
きかく
planning; project; plan; design
×2
自体
じたい
1. itself 2. one's own body; oneself
×2
打ち上げる
うちあげる
1. to launch; to shoot up 2. (of waves) to dash; to wash up (ashore)
×2
花火
はなび
fireworks
×2
当事者
とうじしゃ
person concerned; interested party; related party
×2
愛
あい
1. love; affection; care 2. attachment; craving; desire
×2
込める
こめる
1. to load (a gun, etc.); to charge 2. to put into (e.g. emotion, effort)
×2
照れる
てれる
to be shy; to be bashful; to feel awkward; to feel embarrassed
×2
舞台
ぶたい
1. stage (theatre, theater) 2. scene or setting (e.g. of novel, play, etc.)
×2
架空
かくう
1. fictitious; imaginary; fanciful; fabricated 2. aerial; overhead
×2
都市
とし
town; city; municipal; urban
×2
出稼ぎ
でかせぎ
working away from home
×2
主役
しゅやく
leading part; leading actor; leading actress
×2
日本人
にほんじん
Japanese person; Japanese people
×2
戦後
せんご
postwar period; period after Second World War
×2
非常
ひじょう
1. emergency 2. extraordinary; unusual
×2
有難み
ありがたみ
value; worth; virtue; blessing
×2
徐々
じょじょ
1. slow; gradual; steady 2. calm; composed; relaxed
×2
健康
けんこう
1. health 2. healthy; sound; fit; wholesome
×2
実
じつ
1. truth; reality 2. sincerity; honesty; fidelity
×2
手厚い
てあつい
warm (treatment, reception, etc.); kind; cordial; hospitable; courteous; respectful
×2
介護
かいご
nursing; care; caregiving; caring
×2
飼育
しいく
breeding; raising; rearing
×2
不健康
ふけんこう
poor health; ill health; unhealthy
×2
状態
じょうたい
state; condition; situation; appearance; circumstances
×2
陥る
おちいる
1. to fall into (e.g. a hole) 2. to fall into (chaos, depression, dilemma, illness, etc.)
×2
据える
すえる
1. to place (in position); to fix; to set (e.g. table); to lay (foundation) 2. to install; to seat (someone)
×2
脱出
だっしゅつ
1. escape; break-out 2. prolapse; proptosis
×2
描く
えがく
1. to draw; to paint; to sketch 2. to depict; to describe
×2
経つ
たつ
to pass (of time); to elapse
×2
嘗て
かつて
1. once; before; formerly; ever; former; ex- 2. never yet; never before; first time; still not happened
×2
失う
うしなう
1. to lose 2. to miss (a change, opportunity)
×2
昔々
むかしむかし
long ago; once upon a time
×2
強さ
つよさ
strength; power
×2
信じる
しんじる
to believe; to believe in; to place trust in; to confide in; to have faith in
×2
疑う
うたがう
to doubt; to distrust; to be suspicious of; to suspect
×2
戯画
ぎが
caricature; cartoon; comics
×2
洞察
どうさつ
discernment; insight
×2
一切
いっさい
1. all; everything; entirety; the whole 2. absolutely (not); (not) at all; (none) whatsoever; without exception
×2
感覚
かんかく
sense; sensation; feeling; intuition
×2
観方
かんぽう
Kanpou (given)
×2
全く
まったく
1. really; truly; entirely; completely; wholly; perfectly 2. indeed
×2
全文
ぜんぶん
whole passage; full text; whole sentence; full paragraph
×2
月刊
げっかん
monthly publication; monthly issue
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号
ごう
1. number; edition; make; model; issue; part of that group 2. sobriquet; pen-name
×2
掲載
けいさい
publication (e.g. of an article in a newspaper); carrying (e.g. a story); running (e.g. a serial); insertion (e.g. of an advertisement); printing; posting (e.g. on the web)
×2
円安
えんやす
cheap yen