Published: 2025-04-15 19:00

Plan Cのデザイナー、カロリーナ・カスティリオーニにインタビュー──「きっかけは日本人男性のスタイル」

プラン シー（Plan C）のクリエイティブ・ディレクター、カロリーナ・カスティリオーニ（Carolina Castiglioni）が来日。2025年春夏シーズンよりスタートしたメンズラインについて訊いた。

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マルニ（MARNI）の創業者でありオーナーであったジャンニ＆コンスエロ・カスティリオーニの娘であるカロリーナ・カスティリオーニは、高校で美術を専攻し、マランゴーニ大学でファッションビジネスを学んだ後、マルニに合流した。最初はアクセサリーのリテールバイヤーからスタートし、さまざまな部門で13年間以上にわたりブランドの発展に携わった。

2018年9月に自身がクリエイティブ・ディレクターとしてプラン シーを立ち上げ、デビュー翌年には東京にフラグシップを構え、伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店でショップを展開をスタート。そして2023年9月に、GINZA SIXにフラグシップを移し、都内では唯一メンズ・レディース両ラインを展開。母親のコンスエロからの影響を感じさせるエフォートレスなアイテムを、エッジのきいたカラー展開や環境に配慮したプロジェクトなどで、あっという間に日本でもファンの心をつかんだ。

今回の来日は、昨年6月ピッティ・ウオモで発表されたメンズラインのプロモーションのため。デビューシーズンからユニセックスでも着用可能なアイテムは、男性のファッショニスタからもチェックされていたが、2025年春夏シーズンから正式にメンズラインがローンチした。

桜満開の季節に来日したカロリーナに、2023年オープンしたGINZA SIXの店舗でインタビューした。

──メンズラインを新たにスタートさせたきっかけを教えてくれますか？

正直にいえば日本のマーケットからそういう要望が上がってきたというのが、一番大きいです（笑）。日本人の男性がレディースアイテムを購入するケースが多いときいていたので、それならメンズコレクションを出しましょうと。それとレディスだけではなく、ライフスタイルブランドとして育てていきたいという思いがあったので、正式にメンズをスタートすることにしました。

──メンズラインの特徴を教えて下さい。

もともとレディースでは自分が着たいものをデザインしており、最初はメンズ単独のラインを立ち上げるのは難しいかな、と思いました。でも、レディースのアーカイブやシーズンコレクションの中から、サイズをメンズ用にアジャストしてアイテムを構成するなら可能だと思い、コレクションを構成しています。もちろんサイズは日本市場にも配慮しています。

──ブランド本来のデザインからのスピンオフということですね。

もともと私自身、デザインを始めるときにメンズウェアのほうが好きなので、リサーチするときもメンズブティックやワークウェアの店に行ってアイデアを集めます。フォルムはメンズのボクシーなシルエットが好きで、テキスタイルもスポーツウェアではなくテーラーリングから選んでいます。リサーチから始まって、アイテムによってはレディースなのでフェミニンな雰囲気を出すためにドレープの出るシルキーなテキスタイルを使用したり、ドローストリングスでクロップドシルエットに調節できるようにしたり、首周りを広くするなどデザインしていますが、もともとメンズとレディースを分けるというあまり意識はないんです。パンツもレディースからサイズを大きくしているだけで、それ以外はあまり変えていません。

──イタリアンメイドの技術は意識されていますか？

イタリアの仕立てが大好きなので、細かいところはこだわっていますね。例えばジャケットの袖のボタンが4つ重なるようにつけており、内側の仕立てのディテールはイタリアのクラシコの作り方です。ジャケットの裏地にこだわりパイピングを施しています。わかりやすいサルトリアルの技術ですね。

──ご自身もメンズを着用されているのですか？

今日、私が着ているこのカーペンタージャケットもメンズのアイテムです。私には袖丈が少し長いので今日はロールアップして着ています。ワックス加工を施した上質なコットンの素材を使い、イタリアらしい仕上がりでしょ。

阪急うめだ本店では4月22日までポップアップを開催中。

──プラン シーを着てほしい男性のイメージ像は？

特に理想像は設けていませんが、あえて言うならクリエイティブでいろんなものをミックスすることを楽しめる男性ですね。テキスタイルにこだわっているのでそれを理解して、少し変わったプラン シー独特のフォルムを楽しんでいただける方です。

──ブランドデビュー時に発表されていたシグニチャーカラーのグリーンのレザーのオーバーサイズのブルゾンは、男性が着用している姿をよく見ました。男性がレディースを着るというトレンドが話題になり出したのはお母さん（コンスエロ・カスティリオー二）がデザインしていた頃のマルニが最初だったのでは？

そうかもしれませんね。プラン シーの考え方においても母親からの影響はたくさんあります。マルニのプリントのシャツを男性が着るというのは早い段階から確かにありましたね。でもそのスタイルを始めたのは、やはり日本の男性からなんです。ショートパンツもそうかもしれません。日本人の着こなしが私は好きです。大胆な色の組み合わせもそうだし、自由に実験しながら着こなしを楽しんでいる男性が多いように思います。

──今シーズンのコレクションからお気に入りのアイテムをひとつ紹介してください。

フーディーシャツは気にいっています。胸のプリントは私が撮った日常の写真で、この写真はお風呂に入ってる娘の足です。スペインにある自分たちの別荘のカーテンが風で膨らんでいる写真を自分でペインティングを加えたプリントも好きです。白いシャツをキャンバスに見立てて、写真にはそれぞれタイトルが右上に入っています。これは「風に膨らんだカーテン」（写真左）、こっちは「バスタブのなか」（写真右）。

──その足はプラン シーのキャラクターにもなっているイラスト「Pili&Bianca」を描いた娘さんの足なんですね。グラフィックもそうですが、色の使い方がいつも楽しいですね。そのアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか？

デビューコレクションからグラフィックはわたしにとっては大切な要素です。プライベートでもデザインとアート、写真が好きでそれをブランドに取り入れようと常に考えています。ミラノのショールームは私の曽祖母が使っていた毛皮のアトリエを使っているのですが、そこに置く家具を休みの日に探しにいくのはプライベートでの楽しみでもあります。ミラノにも骨董市はあるのですが、年に何回かパルマで行われる骨董市はイタリア中からお店が出店するのでおすすめです。

カロリーナ・カスティリオーニ 高校では美術を専攻し、マランゴーニ大学ではファッションビジネスを学び、卒業後の2005年にファミリービジネスであった「マルニ」ブランドに参画。最初はリテールのアクセサリーバイヤーとして勤務した後、E コマースに進出し、イタリア発のファッション・アートの通販サイトである YOOXでマルニの最初のオンラインショップを立ち上げや、マルニのブランド設立20周年を祝うイベント「マルニフラワーマーケット」など、約13年以上の経験を積んだ。18 年 9 月には、父のジャンニがブランドの最高経営責任者、弟のジョバンニがオペレーションディレクターを務める、「Plan C / プランシー」のクリエイティブ・ディレクターとしてブランドを設立した。