Published: 2025-03-04 20:41

ボルボはやっぱり雪に強い！ 新型EX30の実力を試した

ボルボのBEV（バッテリー式電気自動車）「EX30」を、雪道でサトータケシが試乗した。

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職業柄、いろいろな種類の試乗会に参加するけれど、あまり経験したことがないのがBEVのスノードライブだ。雪が積もるくらい寒いとエアコンをガンガン使うから電気が減って、でも雪が積もるような地域にはまだ充電インフラが整っていないから、BEVのスノードライブ試乗は企画しにくいのかもしれない。

だから今回、ボルボが雪国で試乗会を開催してくれたのは、雪道とBEVの相性を確かめるいい機会になった。しかも試乗するのは　後輪駆動のボルボEX30。一般に、滑りやすい路面では前輪駆動に比べて後輪駆動は不利だとされているから、そのあたりも確認できる。

少し話が横道にそれるけれど、ボルボに限らず、モーターを1基だけ積むシングルモーターのBEV、つまり2輪駆動のBEVは、フォルクスワーゲンもBMWも後輪駆動を採用している。というのも、エンジン車のFR（後輪駆動）の場合は、駆動力を後輪に伝えるために太くて重たいドライブシャフトが必要になる。けれども、コンパクトなモーターをリヤアクスル付近に設置できるBEVの場合はドライブシャフトが不要。だったら、前輪に駆動と操舵の一人二役を担わせて“ワンオペ”で酷使するより、前後輪で役割を分担したほうが効率的だし、ハンドルもよく切れて小回りが利く。

というわけで、BEVが増えると再び後輪駆動が主役の時代がやって来る。

話を戻すと、JRの上越妙高駅で対面したボルボ EX30 Ultra Single Motor Extended Rangeは「クラウドブルーソリッド」というボディカラーで、無駄のないミニマルなデザインとあいまって、灰色の雪雲と雪山の景色にぴったりマッチしていた。北欧デザイン、という言葉が頭に浮かぶ。

このクルマがデビューした時、キーを持って乗り込むと自動で起動することや、ドアミラーの調整までセンターのタッチスクリーンで行うこと、あるいはGoogleのOSを用いたインターフェイスなどに面食らったけれど、すっかり慣れて便利に使えるようになった。「オッケー、Google」と話しかけて目的地を設定、駅周辺は除雪が行き届いていたので、妙高山のスキーリゾート方面を目指す。

ちなみにGoogleのOSは、音楽やラジオ局のセレクトやエアコンの調整など、スマホを音声で操作するのと同じように万能だ。

除雪が行き届いているとはいえ、路面には轍が残り、舗装が荒れた箇所も多い。そんな道を、ボルボ EX30は粛々と走る。乗り心地は快適だし、凸凹路面を涼しい顔で突破するあたり、ボディ剛性がすこぶる高いことも伝わってくる。雪道がどうのという前に、クルマとしてよくできている。

標高が上がるにつれて降雪は激しさを増し、場所によっては視界を確保しにくい状態に陥ることもあった。けれどもミシュランの「X-ICE」を履いたボルボEX30は、何事もなかったかのようにグリップする。

一箇所、アイスバーンになっている路面でズルっときたけれど、電子制御式の横滑り防止装置が作動して、不安定な状態はスパッと収まった。この横滑り防止装置はBEVだけでなく、エンジン車にも備わる。左右のタイヤの駆動力を微妙に調整して、必要とあればブレーキも介入して、自動で横滑りを抑える安全装置だ。

ドライバーの体感として、モーターの駆動力の調節は、エンジンよりはるかに素早い印象だった。「滑るかな？」と、思った瞬間に、先回りしてタイヤの空転やスライドを止めているように感じる。それも道理で、ガソリンを燃やして、ピストンを垂直運動させて、それを回転運動に変換してタイヤに伝えるエンジンよりも、電気をピピッと流したり絞ったりするモーターのほうがレスポンスは優れているに決まっている。

結論として、少なくとも一般道では何も起こらない。安全な広場を見つけてもう少しアクセルペダルを踏み込んでみると、さすがに最高出力が272psもあるからリヤがブレークする瞬間もあるけれど、それは一瞬で、すぐに平和な世界が戻ってくる。

冒頭に記したように電力消費や充電施設の問題はあるにせよ、こと走行安定性に関しては、雪道こそBEVではないだろうか。北欧出身のボルボだけに、雪道に対応する独自のノウハウとセッティングを持っていることを加味する必要があるけれど、とにかく安心して走ることができる。雪とBEVの相性を知ることができる、いい機会になった。