Published: 2025-02-12 17:11

火星の地下に存在する「氷」の詳細な分布が見えてきた

火星の地下に存在する氷の分布を精密に特定することに、日本の研究チームが世界で初めて成功した。これは将来的な火星の有人探査に欠かせない水を手に入れるうえで重要な進展といえる。

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米航空宇宙局（NASA）は「月から火星へ」というスローガンを掲げ、2040年代に計画されている将来的な火星の有人探査を見据え、有人の月探査計画「アルテミス計画」を推進している。

その第1段階のミッションである「アルテミスⅠ」はすでに完了した。2022年11月に「スペース・ローンチ・システム（SLS）」を使って無人の宇宙船「オリオン」が打ち上げられ、月を周回後の22年12月に地球に無事に帰還したからである。

現在は第2段階の「アルテミスⅡ」が進行中で、2026年4月に4名のクルーが搭乗する有人の宇宙船「オリオン」をSLSを使って打ち上げ、月を周回後に地球に帰還する計画だ。ミッションの期間は10日間を予定している。

その後、「アルテミスⅢ」で27年の中ごろに有人月面探査を実施し、「アルテミスⅣ」で28年に宇宙ステーション「月軌道プラットフォームゲートウェイ（Lunar Orbital Platform-Gateway）」を拠点に有人月面探査を実施する計画になっている。NASAはこのゲートウェイを足がかりに、将来的な有人火星探査に乗り出す計画だ。

このように、NASAは将来的な有人火星探査を見据えてアルテミス計画を推し進めている。この将来的な有人火星探査において重要と考えられているのが、現実的にアクセス可能な地下の浅い部分に存在する地下氷が、火星のどこにどれだけ存在しているのかを明らかにすることだ。

水は電気分解すれば酸素と水素になるので、車両やロケットの燃料として使えるだけでなく、飲料水にもなる。さらには食料生産などにも利用可能だ。また科学的な見地からも、地下氷のコアを採集することで、火星の過去の気候の変動や地質学的な変動を知ることができるだけでなく、過去、そして現在における微生物などの生命に関する手がかりを得られる可能性もある。

このような火星の地下氷の分布に関して、東京科学大学（旧東京工業大学）などが2025年1月に重要なプレスリリースを発表した。火星の中緯度地域において、地下の浅い部分に地下氷が豊富に存在する場所を精密に推定することに成功したというのだ。研究チームによると、将来的な有人火星探査における有望な着陸候補地になりうるという。