Published: 2025-01-17 18:30

天の川銀河の知られざる“真実の姿”を示した9枚の写真

わたしたちの地球が属する「天の川銀河（銀河系）」は直径10万光年ほどで、1,000億～4,000億個ほどの恒星が存在していると考えられている。中心に存在する棒状の構造から複数の渦巻腕（渦状の構造）が伸びており、銀河のなかでも「棒渦巻銀河」に分類される。

全画像はこちらから

わたしたちにとって最も身近な銀河である天の川銀河であるが、わたしたちは天の川銀河についてよく知っているようで知らないことも多いのではないだろうか。そんな天の川銀河について、望遠鏡との“共演”による美しい画像を交えながら解説していく。

天の川銀河の中心部は丸く膨らんだ形をしており、「バルジ」と呼ばれる。その直径は15,000光年ほどで、古い恒星が集っている。そしてこのバルジの中心には「いて座A*（いてざAスター）」と呼ばれる太陽質量の400万倍ほどの質量をもつ超巨大ブラックホールが潜んでいる。

バルジの周りには、星間物質が渦巻状に円盤のように広がる「ディスク」が広がっている。その直径は10万光年ほどで、厚さは太陽系が位置する辺りで2,000光年ほどだ。

太陽系はこのディスクを構成する小さな渦状腕である「オリオン腕」に位置しており、中心からの距離は28,000光年ほどになる。このようなディスクは、薄い円盤を厚い円盤が挟み込んでいるという興味深い構造になっている。

この天の川銀河を、ヨーロッパ南天天文台（ESO）と欧州宇宙機関（ESA）の宇宙望遠鏡「ガイア」が協力して観測している。ガイアが位置と動きを観測した恒星について、ESOの天文台などの各施設が化学的な組成などを観測する役割分担だ。

例えば、チリにあるESOのパラナル天文台に設置された超大型望遠鏡（VLT）の「FLAMES（ファイバー広分散多天体分光計）」などが使われている。この分光計は、ターゲットとする恒星に向けて光ファイバーをロボットを用いて精密に配置することで、同時に100個以上の恒星の光スペクトルを取得できる。

このようなESOとガイアの協力による観測などから、ふたつのディスクは厚さだけでなく化学的な組成や年齢も異なっていることがわかってきた。

例えば、厚い円盤は薄い円盤よりも90億年ほど古く、重い元素が少ない。また、薄い円盤はガスとちりが豊富に存在し、厚い円盤はほぼ恒星でつくられている。

なお、厚い円盤の恒星の一部は、数十億年前に天の川銀河によってばらばらに引き裂かれ飲み込まれた、より小さな銀河の残骸であると考えられている。これはガイアなどの観測データを用いて、天の川銀河の恒星の動きと化学的な組成を分析したことで明らかになった。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、天の川銀河はおよそ40億年後、現時点では250万光年ほど離れているアンドロメダ銀河と衝突して合体すると予測されている。とはいえ、銀河における恒星と恒星の間は遠く離れているので、これらの銀河が衝突・合体したとしても太陽系が破壊される危険性はないという。

そして、そこから20億年ほどかけて、ふたつの銀河は融合してひとつの銀河を形成すると考えられている。