Published: 2025-03-21 17:05

「ケプラーの超新星」の知られざる正体

1604年10月に初めて観測された「ケプラーの超新星」と呼ばれる超新星を、当時の天文学者たちはどのように理解し、その理解ははたして正しかったのか。米航空宇宙局（NASA）が運用する宇宙望遠鏡の画像などを交えながら解説していこう。

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いまからさかのぼること420年以上前の1604年10月に、へびつかい座の右足の近くに超新星が現れた。この超新星は「ケプラーの超新星」と呼ばれる。惑星の運動に関する「ケプラーの法則」などで知られるドイツの天文学者ヨハネス・ケプラー（1571～1630年）が1年以上にわたって詳細に観測し、その観測結果を著作にまとめて出版したからだ。

この超新星を当時の天文学者たちはどのように理解し、その理解ははたして正しかったのか。米航空宇宙局（NASA）が運用する宇宙望遠鏡の画像などを交えながら、解説していこう。

のちに「ケプラーの超新星」と呼ばれる超新星の観測を最初に開始したのは、実はイタリアの天文学者ロドヴィコ・デッレ・コロンボだった。ケプラーが観測を開始したのは、それから遅れること8日後の10月17日だったという。

そしてケプラーは、1572年に現れた超新星を観測したデンマークの天文学者ティコ・ブラーエの研究に触発され、この新しく現れた超新星を1年以上にわたって肉眼ではあったが詳細に観測し続けたのである。

すると、この超新星は急速に明るさを増していき、やがてマイナス2.5等級にまで明るさを増し、木星よりも明るくなった。そして1606年3月に消失する前には、3週間にわたって昼間でも観測できたという。

ケプラーは1606年の後半に、この超新星に関する詳細な観測結果を著書『へびつかい座の足に現れた新星について』としてプラハで出版したことから、この超新星は「ケプラーの超新星」と呼ばれるようになった。なお、ケプラーの超新星の正式名称は「SN 1604」である。

このケプラーの超新星が発生したのは、地球から20,000光年ほど離れた暗黒星雲複合体の端だと考えられている。暗黒星雲複合体とは、ガスとちりが濃く集まった領域である暗黒星雲が複数集合した天体だ。

このようなケプラーの超新星は、現時点において天の川銀河内で発生し観測された最後の超新星である。また、大マゼラン星雲内で発生し1987年2月に観測された超新星「SN 1987A」が現れるまで、最後に観測された肉眼でも観測可能な超新星であった。