Published: 2025-07-19 09:10

朝のランニングはなぜ効果的なのか？ 運動生理学の専門家に訊いた──連載：教えて！GQドクター

脂肪燃焼、睡眠の質＆集中力UPなど、朝のランニングはいいことだらけ！

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SNS総フォロワー数100万人超えるインフルエンサーも登場するなど、全国に急拡大した市民マラソン人気もひと段落。加熱気味だったブームもおさまり、レベルを問わずランニングが日常生活に定着した人も多いのではないだろうか。

酷暑の影響もあり、早朝のランニングを選ぶランナーが増加傾向にあるが、そもそも朝と夜のどちらのランニングが効果的なのだろうか。現在、トップランナーの間では朝練習が常識であり、昨今の長距離・マラソン界を席巻し、圧倒的な強さを誇る東アフリカ勢の選手たちも、主たるトレーニングとして朝のランニングを取り入れているという。

体温が上がりにくい朝は、距離を走り込みたいトレーニングに適しているほか、高温多湿となった現在の日本では日中の暑さを避ける意味でも向いているのは間違いないだろうが、最新のランニング事情はどのようになっているのだろうか。

ここでは早稲田大学スポーツ科学学術院教授の前田清司氏に解説を依頼。主にスポーツと血管の関係についての研究を専門とする前田教授は、スポーツ科学における専門職者として活躍する人材を養成している。そんな運動生理学のエキスパートに、朝ランニングのメリットについて訊いた。

──そもそも、朝のランニングと夜のランニングでは、身体にとってはどちらがメリットがあるのでしょうか。

よく知られているのが、朝ランニングの脂肪燃焼効果です。筑波大学の研究グループは、朝の運動は夕方の運動に比べて脂肪燃焼が大きいことを明らかにしました。この背景には空腹時間が関係しているとされています。すなわち、空腹の時間が長いほうが脂肪が燃焼するのです。朝ですと、夕飯を食べてからかなり時間が経っていますので、そのぶんだけ体の中の糖、いわゆる糖質が少ない状態になっています。この状態で走ることで、脂肪がよく燃焼するのではと考えられているのです。ダイエット目的で走るなら、朝のランニングのほうが効果的といえるでしょう。

──朝ランニングすると、脳がクリアになって思考が整理され、いいアイデアが浮かぶ気がします。

近年の研究で、運動すると脳の血流が増えることがわかりました。脳の血流が増えるということは、脳が活性化されるということです。つまり、いろいろなことを覚えたりすることもできる効果もあります。実際に私も、何か考え事をするときは動きながら考えるということを実践しています。

ちなみにアスリートは、一般人と比べて認知機能が高いとされています。たとえばボールを使った競技ですと、「どこへボールをパスしよう」と考えたり、陸上競技であれば「どこでかけひきをするか」「どこでスパートしようか」などと考えています。つまり、運動をしながら脳を使っていることが認知機能の向上に貢献していると思います。参考までに、競技レベルが高いほど認知機能が高いこともわかっています。運動することによって、脳の血流が上がり、認知機能の向上も期待できます。

また、太陽の光を浴びることで、セロトニンというホルモンの分泌が促されます。別名「幸せホルモン」とも呼ばれるもので、このホルモンにより脳が活性化され、精神の安定につながるとされているのです。さらには、ストレス軽減や睡眠の質の向上にも関係するホルモンといわれています。

日光を浴びると、意欲や集中力を高める働きのあるドーパミンの分泌も促進されるので、夜ランよりも朝ランのほうがすべてにおいて効果的と言って良いでしょう。集中力も向上し、脳の活動にスイッチが入るような状態になるため、仕事の効率も上がると考えられています。