Published: 2025-01-15 12:10

本物感とエンタメ性を備えたニューエイジな時代劇──大泉洋主演で『室町無頼』は1月17日公開

大泉洋、長尾謙杜、堤真一が出演する映画『室町無頼』が、1月17日に劇場公開する。謎多き人物・蓮田兵衛のアウトロー（無頼）な生きざまを活写したエンタメ系時代劇の見どころをライターのSYOがレビューする。

【写真を見る】長尾謙杜（なにわ男子）、堤真一ほか、豪華共演陣も必見！

エミー賞史上最多となる18部門を受賞した『SHOGUN 将軍』に世界が湧くなか、日本映画界でも時代劇ブームが巻き起こっている。2024～25年には『ゴールデンカムイ』『陰陽師0』『碁盤斬り』『八犬伝』『十一人の賊軍』、さらには『侍タイムスリッパー』といったバラエティ豊かな作品が続々と公開されて話題となり、変化球としては、Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」も世界的ヒットとなった。

今後も、『雪の花―ともに在りて―』やNetflixシリーズ「イクサガミ」、WOWOWと松竹・松竹京都撮影所がタッグを組んだ「連続ドラマW　I, KILL（アイキル）」など多くの新作が控えている。

共通項は、企画性の強さにある。たとえば『碁盤斬り』『十一人の賊軍』の白石和彌監督のように人気監督を抜てきするスタッフィング、日本ファンタジーの原点ともいえる「八犬伝」の映画化、バトルロイヤル要素の強い「イクサガミ」が、その好例だ。

そうした系譜に連なることになるエンタメ系時代劇が、1月17日に劇場公開する『室町無頼』である。1月10日にIMAXで先行公開した本作は、『22年目の告白―私が殺人犯です―』や『あんのこと』で知られる入江悠が監督・脚本を担当。直木賞作家・垣根涼介の同名小説を映画化した。

舞台は、1461年、応仁の乱前夜の京都。日本史上初めて武士階級として一揆を起こした謎多き人物・蓮田兵衛のアウトロー（無頼）な生きざまを活写する。大泉洋が兵衛に扮し、彼に拾われて覚醒していく青年・才蔵を「なにわ男子」の長尾謙杜が任された。

室町時代の映画といえば、直近では『犬王』が挙げられるが、戦国時代や江戸時代といったメジャーどころと比べると、なかなかに珍しい舞台設定ではないか。先行作品が少ないぶん、逆に予備知識は不要。むしろ、観賞ハードルが低い作品とも言える。

『室町無頼』はそうした“強み”を存分に活かしており、ひと言で表すなら隅々まで「見やすい」。既得権益による理不尽な悪政に、大飢饉と疫病の蔓延。路上には幾多の骸（むくろ）が転がるような“超・格差”の時代に、民衆を率いて一揆という“革命”を起こした男の物語は、私たちの“現在”とどことなくシンクロししており、展開に置いてけぼりにされることがない。

入江監督はXにて「堤真一さん演じる骨皮道賢は、中世史で有名な史実に残る“悪党”。治安悪化に匙を投げた幕府から警察権力の一部を委託された暴走族の総長みたいな人で面白い」と語っているが、堤真一ほか、大泉洋、長尾謙杜など登場人物の“キャラ立ち”も絶妙だ。

一方で、本作は「才蔵が過酷な修行を経てヒーローになるまでの物語」という側面を持ち、王道の少年漫画のような爽快さを備えている。入江監督は「『室町無頼』はいくつかの物語の層がありますが、一番シンプルなのは師匠と出会う少年の成長譚。『酔拳』『ベストキッド』が好きな方も楽しめるかと。子供の頃にハマった香港映画に近づけた気がして楽しみながら撮りました」とも投稿している。

加えて、西部劇的なエッセンスも込められており、さらに「地鳴りで器の液体が震える」という『ジュラシック・パーク』を彷彿とさせるなど、演出も遊び心たっぷり。といった具合に、本作は実に自由であり、「時代劇」の固定観念を飛び越えたミックスカルチャー的なエンタメに仕上げられているのだ。

それでいて観客が時代劇に期待する大立ち回りも充実。引きの画に耐えうるリッチな画作り、京の都の洛中で行われる武器を手に取った民衆による市街戦、一対多数の剣劇から互いの信念をかけた一騎打ち、さらに知略戦に至るまで、多彩なバトルが所狭しと散りばめられているのだ。

テンポよく観られて、本物感とエンタメ性の双方を備えた2025年仕様のニューエイジな時代劇。昨今のブームをさらに加速させる存在となるのか、興行面を含めて注目したい。

映画『室町無頼』

垣根涼介の時代小説を大泉洋主演で実写映画化した戦国アクション。日本の歴史において初めて武士階級として一揆を起こした室町時代の人物・蓮田兵衛の知られざる戦いをドラマチックに描く。

公開日：2025年1月17日（金） 監督・脚本：入江悠 原作：垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊) 出演：大泉洋、長尾謙杜、松本若菜、遠藤雄弥、前野朋哉、阿見201、般若、武田梨奈、水澤紳吾、岩永丞威、吉本実憂、土平ドンペイ、稲荷卓央、芹澤興人、中村蒼、矢島健一、三宅弘城、柄本明、北村一輝、堤真一

©2025『室町無頼』製作委員会

文・SYO 編集・神谷 晃（GQ）